中国政府が、自国のプロパガンダを世界に広げるために西側の広告企業を利用している現実が浮き彫りになった。国際NGO団体「フリーダムハウス」のシニアアドバイザー、サラ・クック氏が調査した結果を、「ザ・ディプロマット」紙に掲載した。
クック氏の調査結果によると、中国大使館は広告企業ブラウン・ロイド・ジェームズ(BLJ)と契約を締結し、この企業を通じてアメリカの各メディアに記事を掲載していた。具体的には、契約期間中に中国大使の崔天凱氏の記事が「ワシントンポスト」、「ニューヨークタイムズ」、「ブルームバーグ」などに掲載されていた。なお、このBLJと同様の契約を締結している組織に、中国米国交流基金(CUSEF)があり、こちらは中国共産党の影響下にあるとされている。
中国政府は、自国の政治的見解をアメリカの報道機関に反映させるため、広告企業を通じてアメリカのジャーナリストを中国に招待するなどの戦略をとっている。また、アフリカ系アメリカ人のオピニオンリーダーとの「良好な関係」の形成に向け、2019年から2020年にかけて30万ドルを投資している。
中国の影響力の拡大はアメリカだけでなく、他の国々にも及んでいる。ルーマニアでは中国の通信大手ファーウェイのネットワーク機器の販売を推進しており、ケニアでは負債問題を抱える鉄道プロジェクトの悪評を打ち消すために広告企業を利用している。
クック氏は「他の敵対的な勢力と比較して、中国が大規模に広告企業を活用している事実について注意が必要だ」と指摘。また、中国がデマを広めるために広告企業を利用している事例として、新型コロナウイルスがアメリカで開発された生物兵器だという誤った主張の拡散を挙げた。
クック氏は「アメリカの広告企業やメディアは、中国共産党からの資金を断つべきだ」と主張。さらに「アメリカのジャーナリストや大学関係者も、中国政府が”奢り”で主催する中国への旅行を断るべきだ」と訴えている。